教員はなぜ労働基準法の適用を除外されているのか?その理由と問題点を解説

教員は、子どもたちに知識や技能を教えるだけでなく、人格や道徳を育む重要な役割を担っています。

しかし、教員は一般の労働者とは異なり、労働基準法の適用を除外されている職種の一つです。

これは、教員が特別な職務内容や特性を持ち、教育行政の制度や歴史によって形成されたものです。

しかし、このことは、教員に対して過重な負担や長時間労働を強いることになり、教育現場に様々な問題を引き起こしています。

例えば、教員の職場環境や人間関係の悪化、教育質や教員の専門性の低下など、健康や生活に支障をきたすことになります。

このような状況は、教員の権利や福祉を守るだけでなく、子どもたちの教育や未来にも影響を与える重大な問題です。

そこで、この記事では、教員が労働基準法の適用を除外されている理由や背景、その影響や問題点、そして改善策や提言について解説します。

〈プロフィール〉

・小学校教員、家庭教師、塾、学童など様々な学校現場を経験。

・現在はその経験を活かして教育記事を執筆中。

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目次

教員が労働基準法の適用を除外されている理由と背景

教員の職務内容と特性

まず、教員が労働基準法の適用を除外されている理由の一つとして、教員の職務内容と特性が挙げられます。

教員は、授業や学級経営だけでなく、学校行事や部活動、進路指導や保護者対応など、多岐にわたる業務を行っています。

また、教員は、子どもたちに対して責任感や使命感を持ち、自己研鑽や自己評価を行っています。

これらの職務内容や特性は、教員にとってはやりがいや魅力となる一方で、労働基準法の適用には不向きなものです。

なぜなら、教員の業務は、時間的にも場所的にも制限されず、量的にも質的にも測定しにくいからです。

例えば、授業の準備や採点は自宅で行うことも多く、部活動や学校行事は休日や夜間に行うこともあります。

また、子どもたちの成長や学力は一朝一夕には変わらず、教員の努力と成果との関係は明確ではありません。

このように、教員の業務は労働基準法で定められた労働時間や休日などの規制に従うことが難しく、また従う必要がないと考えられてきました。

そのため、教員は労働基準法の適用を除外されてきたのです。

教育行政の制度と歴史


次に、教育行政の制度と歴史が挙げられます。

日本では、学校教育法に基づき、文部科学省が中央から全国の学校教育に関する方針や指導を行っています。

また、地方自治体が各都道府県や市町村で学校教育に関する事務を行っています。

この教育行政の制度は、教員の労働条件や労働時間にも影響を与えています。

なぜなら、教員は地方自治体の職員として採用され、給与や昇進などの待遇は地方自治体によって異なるからです。

また、教員は文部科学省の指導に従って教育活動を行わなければならず、自由裁量や自主性が制限されることもあります。

このように、教員は中央と地方の二重の管理下に置かれており、労働基準法の適用を求めることが困難です。

また、教育行政の制度は、戦後の高度経済成長期に確立されたものであり、現代の社会や教育の変化に対応できていないという問題もあります。

国際的な比較と動向

最後に、国際的な比較と動向が挙げられます。

日本と他の先進国との間には、教員の労働条件や労働時間に関する大きな差があります。

例えば、OECD(経済協力開発機構)が発表したTALIS(教員と校長の国際的調査)によると、日本の教員は平均して週に54.4時間も働いており、OECD加盟国中で最も長い労働時間を記録しています。

これは、OECD平均の38.8時間やフィンランドの32.3時間などと比べてもかなり高い水準です。

また、日本の教員は授業以外の業務に多くの時間を費やしており、授業時間比率は35.6%OECD加盟国中で最も低いです。

これは、OECD平均の49.8%やフィンランドの60.1%などと比べてもかなり低い水準です。

授業以外の業務とは、学校行事や部活動、進路指導や保護者対応、学校管理や委員会活動などを指します。

このように、日本の教員は他国の教員と比べて過重な負担や長時間労働にさらされており、その一方で授業に割く時間や質が低下しています。

これは、日本が国際的な教育水準や競争力を維持する上で大きなハンディキャップとなっています。

教員が労働基準法の適用を除外されている影響と問題点

過重な負担と長時間労働

前述したように、教員が労働基準法の適用を除外されていることは、教員に対して過重な負担や長時間労働を強いることになります。

これは、教員自身だけでなく、子どもたちや学校全体にも悪影響を及ぼします。

まず、教員自身にとっては、過重な負担や長時間労働は、ストレス疲労を引き起こし、メンタルヘルス身体健康に悪影響を与えます。

実際に、教員のうつ病過労死などの事例は後を絶ちません。

また、教員は自分の時間やプライベートな生活を犠牲にしなければならず、家族や友人との関係や趣味などの楽しみも失ってしまいます。

次に、子どもたちにとっては、過重な負担や長時間労働は、教員の教育力モチベーションを低下させ、教育質に悪影響を与えます。

実際に、教員が授業以外の業務に多くの時間を費やしていることは、授業の準備や反省、教材開発などの時間や質を削っていることを意味します。

また、教員がストレスや疲労に苦しんでいることは、子どもたちに対する愛情や関心、信頼や尊重などの感情を減らしていることを意味します。

最後に、学校全体にとっては、過重な負担や長時間労働は、教員の離職率や欠員率を高め、人材不足や人材流出に悪影響を与えます。

実際に、教員の退職理由のトップは「健康上の理由」であり、教員の欠員率は年々増加しています。

また、教員の志望者数は減少傾向にあり、教員の資質や能力も低下しているという指摘もあります。

職場環境や人間関係の悪化

次に、教員が労働基準法の適用を除外されていることは、職場環境や人間関係を悪化させることになります。

これは、教員が仕事に対する不満や不安を抱えることで、同僚や上司、生徒や保護者などとのコミュニケーションや協力が困難になることを意味します。

まず、教員の同僚や上司にとっては、教員が労働基準法の適用を除外されていることは、教員間の競争や不平等を生むことになります。

実際に、教員は給与や昇進などの待遇が地方自治体によって異なるため、同じ職種であっても他の地域の教員と比較して不利になることがあります。

また、教員は自分の業績や評価を客観的に測定することが難しいため、他の教員と比較して劣っていると感じることがあります。

このように、教員は同僚や上司との関係において、嫉妬や劣等感、不信感や対立感などのネガティブな感情を抱きやすくなります。

これは、教員のチームワークや協力性を低下させ、学校組織の機能や風土を損なうことになるでしょう。

次に、教員の生徒や保護者にとっては、教員が労働基準法の適用を除外されていることは、教員への期待や要求を高めることになります。

実際に、教員は子どもたちの学力や進路だけでなく、人格や道徳などにも責任を持つと考えられており、生徒や保護者から多様な要望や苦情を受けることがあります。

また、教員は労働時間や休日が制限されていないため、生徒や保護者から常に連絡や対応を求められることがあります。

このように、教員は生徒や保護者との関係において、過剰な負担やプレッシャーを感じることになります。

それが原因となって、教員の自信や尊厳を傷つけ、生徒や保護者との信頼関係や協力関係を損ねることになりかねません。

教員が労働基準法の適用を除外されている状況の改善策と提言

労働時間や休日の規制と管理

前述したように、教員が労働基準法の適用を除外されている状況は、教員自身だけでなく、子どもたちや学校全体にも様々な問題を引き起こしています。

そこで、この状況を改善するためには、まず、教員の労働時間や休日を規制し管理することが必要です。

具体的には、以下のような方法が考えられます。

  • 教員の労働時間を定める勤務時間規則を制定し実施する。
  • 教員の労働時間を記録し分析する勤務時間管理システムを導入し活用する。
  • 教員の休日を確保するために代休制度有給休暇制度を整備し推進する。
  • 教員の業務量を減らすために業務簡素化業務分担を行う。

これらの方法は、教員の過重な負担や長時間労働を軽減し、メンタルヘルスや身体健康を保護することにつながります。

また、教員の自分の時間やプライベートな生活を充実させることにつながります。

職務内容や責任範囲の明確化と簡素化

次に、教員の職務内容や責任範囲を明確化し簡素化することが必要です。

具体的には、以下のような方法が考えられます。

  • 教員の主たる職務である授業に重点を置き、授業以外の業務を削減する。
  • 教員の授業に対する評価フィードバックを客観的かつ公正に行う。
  • 教員の職務内容や責任範囲を明文化し、教員自身や他者と共有する。
  • 教員の職務内容や責任範囲に応じた給与昇進などの待遇を決定する。

これらの方法は、教員の授業力やモチベーションを向上させ、教育質を高めることにつながります。

また、教員の自信や尊厳を回復させることにつながります。

職場環境や人間関係の改善と支援


最後に、教員の職場環境や人間関係を改善し支援することが必要です。

具体的には、以下のような方法が考えられます。

  • 教員同士のコミュニケーション協力を促進するために、定期的なミーティングや交流会などを開催する。
  • 教員の悩みや相談に対応するために、専門的なカウンセリングメンタリングなどのサービスを提供する。
  • 教員と生徒や保護者との関係を良好に保つために、定期的な面談アンケートなどで意見交換やフィードバックを行う。
  • 教員と文部科学省や地方自治体との関係を調整するために、教員の声や要望を反映させるための協議会窓口などを設置する。

これらの方法は、教員のストレスや不満を解消し、教員間や教育関係者間の信頼関係や協力関係を構築することにつながります。

また、教員のチームワークや協力性を高めることにつながります。

まとめ

この記事では、教員が労働基準法の適用を除外されている理由や背景、その影響や問題点、そして改善策や提言について解説しました。

教員は、子どもたちの教育や未来に責任を持つ重要な職業ですが、一般の労働者とは異なり、労働基準法の適用を受けられていません。

これは、教員の職務内容や特性、教育行政の制度や歴史、国際的な比較と動向などによって形成されたものです。

しかし、このことは、教員に対して過重な負担や長時間労働を強いることになり、教育現場に様々な問題を引き起こしています。

教員の職場環境や人間関係が悪化し、教育質や教員の専門性が低下し、健康や生活に支障をきたすことになります。

これは、教員の権利や福祉を守るだけでなく、子どもたちの教育や未来にも影響を与える重大な問題です。

そこで、この状況を改善するためには、教員の労働時間や休日を規制し管理すること、職務内容や責任範囲を明確化し簡素化すること、職場環境や人間関係を改善し支援することが必要です。

これらの方法で、メンタルヘルスや身体健康を保護し、自信や尊厳を回復させることで、教員の授業力やモチベーションを向上させ、教育質を高めることにつながっていくのです。

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