教員の長時間労働はなぜ起きるのか?データから原因と影響、解決策を探る

公立学校の教員は、日本で最も長時間労働をしている職業の一つです。

文部科学省が2022年度に実施した教員勤務実態調査(速報値)によると、1カ月あたりの労働時間は平均293時間46分でした。

これは、「過労死ライン」と呼ばれる月80時間大幅に上回る水準です。

また、休日も含めて1日あたりの勤務時間は平均10時間51分でした。

これは、「過重労働」とされる1日8時間2時間以上超える水準です。

教員の長時間労働は、教育現場や社会全体に深刻な影響を及ぼしています。

教員自身は、健康やモチベーションが低下し、ストレスや疲労が蓄積します。

生徒は、教員とのコミュニケーションや指導が十分に受けられず、学習や成長に支障が出ます。

その他、学校は、教員間や職員間の連携や協力が乏しくなり、組織や風土が悪化しますし、社会は、教育水準や人材育成が低下し、国際競争力や社会的信頼が失われます

では、なぜ教員の長時間労働は起きるのでしょうか?

また、それによってどのような影響が出るのでしょうか?

そして、それを解決するためにはどうすればいいのでしょうか?

この記事では、これらの疑問に答えていきます。

〈プロフィール〉

・小学校教員、家庭教師、塾、学童など様々な学校現場を経験。

・現在はその経験を活かして教育記事を執筆中。

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目次

長時間労働の主な原因

教員の長時間労働の主な原因は、業務量の増加と多様化教育改革への対応部活動の指導などです。

まず、業務量の増加と多様化について見ていきましょう。

教員は、授業や学校行事だけでなく、さまざまな業務を担っています。

例えば、カリキュラムや教材の作成、成績や進路の管理、保護者や地域との連携、学校経営や委員会活動などです。

これらの業務は、年度や時期によって変化したり、重なったりすることが多くあります。

また、新型コロナウイルス感染症の流行オンライン授業の導入などで、さらに業務が増えたり、複雑化したりすることもあります。

これらの業務をこなすためには、多くの時間と労力が必要です。

教育改革への対応

次に、教育改革への対応について見ていきましょう。

教員は、学校教育法の改正に伴って、学習指導要領教員免許制度大きく変わることに対応しなければなりません。

具体的には以下のような変更点があります。

学習指導要領では、アクティブ・ラーニングやプログラミング教育などの新しい内容や方法が導入されます 。これによって、生徒の主体性や創造性を育むことが目指されます。

教員免許制度では、教員免許更新制度や教員免許状種別統合制度が導入されます 。これによって、教員の資質や能力の向上や多様化が促されます。

これらの教育改革に対応するためには、新しい知識やスキルを身につけたり、研修や試験を受けたりする必要があります。

これらもまた、多くの時間と労力を要します。

部活動指導

最後に、部活動の指導について見ていきましょう。

教員は学校の部活動の指導にも多くの時間と労力を費やしています。

特に中学校や高校では、部活動は生徒の学校生活に欠かせないものとなっています。

教員は、部活動の指導を通して、生徒の技能や体力、精神力などを育てるとともに、生徒との信頼関係やコミュニケーションを深めることができます。

しかし、一方で、部活動の指導は、教員にとっても大きな負担となっています。

なぜなら、部活動の指導は、教員の本来の業務である授業や学校行事とは別に行われるものであり、放課後や休日にも続くことが多いからです。

また、部活動の指導には、安全管理や事故対応などのリスクも伴います。

以上のように、教員の長時間労働の主な原因は、業務量の増加と多様化、教育改革への対応、部活動の指導などです。

これらの原因を解決することができれば、教員の長時間労働も減らすことができるでしょう。

では、具体的にどのような解決策があるのでしょうか?

それを見ていきましょう。

教員自身や学校、自治体、国などが取るべき対策

教員の長時間労働を解決するためには、教員自身や学校、自治体、国などが取るべき対策があります。

まず、教員自身について見ていきましょう。

教員自身は、以下のような対策を取ることがおすすめです。

教員自身が取るべき対策

業務の見直しや効率化

これは、自分の業務内容や優先順位を明確にし、必要なものだけに集中することです。

例えば、カリキュラムや教材は共有や再利用をすることや、成績や進路はデータベース化や自動化をすることなどです。

ICT(情報通信技術)の活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

これは、パソコンやインターネットなどの技術を使って業務を簡素化や高速化することです。

例えば、授業ではオンライン授業フリップラーニングなどを導入することや、保護者や地域とはメールやSNSなどで連絡することなどです。

待遇や評価の改善を求める

これは、自分の労働条件や報酬などに不満がある場合は、適切に主張することです。

例えば、残業代や手当などを要求することや、業績評価制度や昇給制度などを改善することなどです。

次に、学校について見ていきましょう。

学校が取るべき対策

学校は以下のような対策を取ることがおすすめです。

教員の業務負担を軽減する

これは、教員の業務内容や量を見直し、必要なものだけに絞ることです。

例えば、文書や報告などの書類作成は簡素化や標準化をすることや、会議や研修などの時間や回数を削減することなどです。

教員の協力や支援を促進する

これは、教員間や職員間の連携・協力を強化し、業務の分担や助け合いをすることです。

例えば、チームティーチングや授業公開などを行って教育力を高めることや、教育相談やメンタルケアなどを行って教育環境を改善することなどです。

教員の人材確保や配置を適切にする

これは、教員の数や質に応じて、学校や教科の配置を調整することです。

例えば、教員不足や過剰な学校には、他の学校からの応援や転勤などを行うことや、教員免許状種別統合制度によって教科の変更ができるようにすることなどです。

最後に、自治体や国について見ていきましょう。

自治体や国が取るべき対策

自治体や国は、以下のような対策を取ることがおすすめです。

教員の業務改善や支援策を提供する

これは、教員の業務内容や方法に関する指導や助言を行うことです。

例えば、業務改善プランやICT活用ガイドラインなどを作成して配布することや、ICT機器やDX支援ツールなどを提供することなどです。

教員の待遇改善や評価制度の見直しをする

これは、教員の報酬や福利厚生などに関する改善案を策定し、実施することです。

例えば、残業代や手当などの増額や支給条件の緩和をすることや、健康診断や休暇制度などの充実をすることなどです。

また、教員の業績評価制度も見直し、教員の努力や成果に応じて昇給や昇進などの機会を与えることです。

部活動の見直しや外部協力の促進をする

これは、部活動の指導に関する基準や方針を策定し、実施することです。

例えば、部活動の指導時間や回数を制限したり、部活動指導手当を支給したりすることです。

また、部活動の指導に外部の協力者(OB・OG・保護者・地域住民・スポーツ団体・民間企業など)を積極的に参加させたり、支援させたりすることです。

以上のように、教員自身や学校、自治体、国などがそれぞれ対策を取ることで、教員の長時間労働を解決することができます。

これらの対策は、教員の働き方改革に向けた重要なステップです。

まとめ

この記事では、教員の長時間労働の原因と影響、解決策などについて解説しました。

教員の長時間労働は、業務量の増加と多様化、教育改革への対応、部活動の指導などによって起きています。

これは、教員自身や生徒、学校、社会などに様々な影響を及ぼしています。

これを解決するためには、教員自身や学校、自治体、国などがそれぞれ対策を取る必要があります。

教員の働き方改革は、教員の健康やモチベーションを高めるだけでなく、生徒の学習や成長を促進し、学校の組織や風土を改善し、社会の教育水準や人材育成を向上させることができます。

教員の働き方改革は、子どもたちの未来を支えるために必要な取り組みです。

私たちは、教員の働き方改革に協力し、教員を応援しましょう。

参考文献は以下のとおりです。

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