教員免許更新制廃止の対象者と影響|更新が必要な人は?

教員免許更新制とは、2009年4月から始まった制度で、教員として必要な資質や能力を保持するために、10年ごとに30時間以上の講習を受けることが求められていました。

しかし、この制度には多くの問題点が指摘されており、2021年7月に廃止する法改正が成立しました。

では、教員免許更新制の廃止はどのような影響を及ぼすのでしょうか。

教員免許更新制廃止の対象者とは誰なのか、2023年3月までに更新が必要な人はいるのか、教員免許更新制廃止のメリットやデメリットについて解説します。

〈プロフィール〉

・小学校教員、家庭教師、塾、学童など様々な学校現場を経験。

・現在はその経験を活かして教育記事を執筆中。

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目次

教員免許更新制廃止の対象者とは

教員免許更新制廃止の対象者は、基本的には2009年4月1日以降に初めて授与された免許状(新免許状)を持つ人です。

新免許状は10年間の有効期間が設けられており、その期限内に30時間以上の講習を受けて修了確認を受けなければ、免許状が失効してしまいます。

しかし、2022年7月1日以降に有効期限を迎える新免許状保有者は、講習を受けたり修了確認を受けたりする必要がなくなります。

つまり、2022年度末(2023年3月31日)までに有効期限を迎える新免許状保有者は、教員免許更新制廃止の対象者となります。

一方、2009年4月1日以前に初めて授与された免許状(旧免許状)を持つ人は、教員免許更新制廃止の対象者ではありません。

旧免許状保有者は、教員免許を必要とする職に就いているかどうかによって、更新制の適用の仕方が異なります。

教員免許を必要とする職に就いている人は、新免許状保有者と同様に10年ごとに30時間以上の講習を受けて修了確認を受けなければなりません。

しかし、教員免許を必要としない職に就いており、今後もその予定がない人は、修了確認期限(有効期限)を過ぎても免許状は失効せず、「休眠扱い」とされます。

休眠扱いの免許状は、教育職員になることが見込まれる場合には、30時間以上の講習を受けて修了確認を受ければ、再び有効になります

2023年3月までに更新が必要な人

教員免許更新制廃止の対象者ではない人は、2023年3月までに更新が必要な場合があります。

具体的には、以下の2つのケースが該当します。

2022年7月1日以前に有効期限を迎えた新免許状保有者

2022年7月1日以前に有効期限を迎えた新免許状保有者は、教員免許更新制廃止の対象者ではありません。

つまり、廃止後も免許状は失効したままです。

この場合、再び教育職員になることを希望する場合は、再授与を受ける必要があります。

再授与を受けるためには、30時間以上の講習を受けて修了確認を受けることや、教育職員採用試験臨時任用教員リスト登録等の手続きをすることが必要です。

教員免許を必要とする職に就いている旧免許状保有者

教員免許を必要とする職に就いている旧免許状保有者は、新免許状保有者と同様に10年ごとに30時間以上の講習を受けて修了確認を受けなければなりません。

つまり、2023年3月までに有効期限を迎える旧免許状保有者は、教員免許更新制廃止後も更新が必要です。

この場合、更新講習の受講や修了確認の申請は、有効期限の2か月前までに行う必要があります。

教員免許更新制廃止のメリットとデメリット

教員免許更新制廃止は、教員や子どもたちにどのようメリットデメリットがあるのでしょうか。

以下では、主なメリットとデメリットを紹介します。

メリット

免許失効による失職や教員交代のリスクがなくなる

教員免許更新制では、講習や修了確認を怠ったり忘れたりすると、免許状が失効してしまい、教員として働けなくなるというリスクがありました。

しかし、教員免許更新制廃止により、このようなリスクがなくなります。

教員は、講習や修了確認の期限を気にすることなく、教育活動に専念できるようになります。

また、免許失効による教員交代は、子どもたちにとっても不安や混乱を招く可能性がありました。

教員免許更新制廃止は、子どもたちの学習環境の安定にも寄与すると考えられます。

教員の時間的・経済的負担が軽減される


教員免許更新制では、講習や修了確認のために、教員は多くの時間や費用を費やす必要がありました。

特に、地方や離島などの交通の不便な地域に勤務する教員は、講習会場までの移動や宿泊などで大きな負担を感じていました。

また、講習料や交通費などは、教員自身の負担となっていました。

教員免許更新制廃止により、このような時間的・経済的負担が軽減されます。

そのため、自分の時間やお金を自由に使えるようになります

教員研修の質や効果が向上する可能性がある


教員免許更新制では、講習は免許失効を防ぐための義務として受けるものでした。

そのため、教員は講習の内容や方法に対して消極的であったり、批判的であったりする場合がありました。

また、講習は一律に30時間以上という時間枠で行われており、教員の個々のニーズやレベルに合わせることが難しかったです。

教員免許更新制廃止により、講習は免許失効を防ぐためではなく、教員自身の資質や能力の向上を目的としたものとなります。

そのため、教員は講習に対して積極的であったり、参加意欲を高めることができます。

また、講習は教員のニーズやレベルに応じて柔軟に行われることが期待されます。

これらのことから、教員研修の質や効果が向上する可能性があります。

デメリット

教員の資質や能力の保持や向上への意識が低下する恐れがある


教員免許更新制廃止により、教員は講習を受ける義務から解放されます。

しかし、これは同時に、講習を受ける機会やインセンティブからも遠ざかることを意味します。

教員は自ら進んで研修を受ける必要がありますが、忙しい日々の中でそれができるかどうかは不確かです。

また、教員は自分の資質や能力に満足してしまい、向上心を失ってしまう可能性もあります。

これらのことから、教員の資質や能力の保持や向上への意識が低下する恐れがあります。

教員間や社会からの尊敬や信頼が失われる可能性がある


教員免許更新制廃止により、教員は免許状の有効期限を気にする必要がなくなります。

しかし、これは同時に、免許状の価値や意味を忘れてしまうことを意味します。

教員免許状は、教員として必要な知識や技能を備えていることの証明であり、教員としての責任や使命を示すものです。

教員免許更新制廃止により、免許状に対する尊重や誇りを失ってしまう可能性があります。

また、社会からも、教員は定期的に自分の資質や能力を見直すことがなくなったという印象を与えてしまう可能性があります。

これらのことから、教員間や社会からの尊敬や信頼が失われる可能性があります。

教員免許状の価値や意味が希薄化する可能性がある

教員免許更新制廃止により、教員は免許状を一度取得すれば一生有効になります。

しかし、これは同時に、教員は免許状を取得することが容易になることを意味します。

教員免許状は、厳しい試験や研修を経て取得するものであり、それだけに価値や意味があるものです。

しかし、教員免許更新制廃止により、教員は試験や研修を受ける必要がなくなります。

これにより、教員免許状の価値や意味が希薄化する可能性があります。

まとめ

以上、教員免許更新制廃止の対象者とは誰なのか、2023年3月までに更新が必要な人はいるのか、教員免許更新制廃止メリットデメリットについて解説しました。

教員免許更新制廃止は、教員や子どもたちにとって大きな変化となります。

しかし、それだけに、教員は自ら進んで資質や能力の向上に努めることが求められます。

また、社会も教員に対して適切な評価や支援を行うことが必要です。

教員免許更新制廃止は、教育界全体の質的向上の機会となることを期待したいと思います。

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